運は天にあり

内省の記録

会食

夜、バイト先の人たちに食事に連れて行ってもらった。場所は六本木、高そうな寿司屋で、思わず恐縮してしまうような店だった。

 

狭い店内では、カウンターを囲んで常連の客たちが管を巻いている。大将が愛想よく受け答えしている。客のオーダーに応じて、ちょっとずつ寿司が出てくる。なんかもどかしい気もするけど、一品一品がとても美味しい。

 

お酒も入ってきたころ、やっぱり出てきた会社の人の悪口。予定調和のように話題がそちらへ向かっていく。はっきり言って、これは聞きたくなかった。

 

職場に、今ひとつ要領を得ない人がいる。その人のことを指して、頭の回転の悪い人と話しているとイライラすると言う。話をしている最中に、全く別の話をしだすとか。当たり前のことが分からないとか。そんな不満を聞いた。

 

賛同出来なかった。言葉に出して整理しているうちに、別の問題に気づくことはよくある。経験が少なければ、知らなくて仕方がないこともある。色々な言い方をして空気を変えようとしたけれど、ただ単にフォローしているとしか思われなかった。

 

人は私のことを優しいといい、そういう性格で片付けようとする。優しいわけじゃない。IQの違いで人間同士の無理解や断絶が生まれてしまうことに、強い危機感を持っているから。

 

要領を得ないというのは一方的な話で、側から見れば伝える人の伝え方も悪い。相手の目線に立って伝えられていない。しかも、「そんなこともわからないのか」という空気を出すから、余計に曖昧なことを確認しづらくしている。

 

出来ないことは仕方ない。努力でどうしようもないことは山ほどあるし、それを責めたところで仕方がない。でも、その人がいることで生まれる空気とか人間関係とか、目に見えない大事なものも沢山ある。それは決して代えが効かないもので、いなくなったらやりづらくなるし、寂しくもなる。絶対に今と同じようには行かなくなるだろう。結局、お互いに依存しあって、足りない所を補いあって、生活が成り立っている。

 

そういう目に見えない所を重んじてるから言っているので、優しいという言葉で、「情けをかけてやっている」みたいな受け取り方をして欲しくなかった。

 

美食に囲まれ、狭い中少人数で語り合うというのは、危険なものだと思った。良いこともあるけれど、悪い誘惑に逆らえずにろくな話題が出てこない。目に見えないものが分からない人たちじゃないのは、普段一緒にいてわかっている。けど、環境が人を馬鹿にしてしまう。

 

不満、愚痴。別にいいと思う。けど、なんか言い方が残酷だった。この感じを限られた仲間内で共有して欲しくなかったし、もっと思いやりやユーモアのある形で消化して欲しかった。

 

この場が、ただ共犯関係を築くだけの場に成り下がってしまうなら。美味いもの、美しいものも、一辺に白けてしまうな。

 

普段、あまり言葉の力は信じていないけれど、こういう時には、うまく歯止めをきかせたり、矛先を変えたりするような言葉があって欲しいと思う。人間、内輪で悪口を言い合うという誘惑に勝つのは無理だ。だから、そこにブレーキをかけられる言葉をもってないなら、安易に距離を縮めるべきではないと思う。その方が、お互いに罪を作らずに済む。