運は天にあり

内省の記録

雨宮処凛『生き地獄天国』

 

生き地獄天国―雨宮処凛自伝 (ちくま文庫)

生き地獄天国―雨宮処凛自伝 (ちくま文庫)

 

 

久々に魂を揺さぶられたような感じ。すごい本だ。

 

雨宮さんのことを知ったのは、地元のとある講演会がきっかけ。「生きづらさ万歳!」という、不思議なタイトルに惹かれて聞きに行ってみたのだが、自分の中に抱えていた言葉と通じるものをいくつも見つけて、とても面白く感じた。もっと話を聴きたいと思い、デビュー作の本書を手に取ってみた。

 

怒涛の青春時代を経て、バンド活動、政治活動へ。オウム信者と仲良くなったり、右翼の突撃隊に入隊したり、愛国パンクバンドを結成したりと、型破りの活動を繰り広げる。活躍は世界にも向かい、北朝鮮への入国や、開戦前夜のイラクでのライブにまで及ぶ。目まぐるしく激しい、冒険活劇のような25年の自伝だった。

 

これがもう、面白いのなんの。

 

経歴を並べると派手だけれど、もとは一介のリストカッター。青春時代の苦悩や世の中への疑問の果てに政治活動があり、遠い感じがしない。中学時代のいじめや、社会との繋がりを持てない苦しさなど、他人事と思えない所も多かった。歌も出来ず、政治の知識もなかったけれど、がむしゃらに行動していく内に道が出来る。劇的だけれど、「こういう風にも生きられるんだ」と、自分のこととして考えさせてくれた。

 

右翼団体加入の前には、ビジュアル系やサブカルに傾倒していたので、その手の文物が良く出てくる。世代は違うけれど、『ゴー宣』は昔読んでたし、Xも好きだったので、好きなものが重なっているのは嬉しかったな。

 

政治というと仰々しいけれど、本当に関わり方ひとつなのだと痛感した。オウムも右翼も北朝鮮も、これを読むとかなり印象が変わる。尊師の下での修行生活、右翼の扇情的な演説、北朝鮮民族主義、どれも居心地良さそうに見える。違うのは、「世の中」という目に見えないものに対する鬱積を、どう表現するかというところ。色んな問題は抱えているけれど、それは資本主義社会についての自省も含めて、考えるべきことと思う。

  

イラクでのライブにて、感極まり、思想を超えた答えにたどり着く場面が好きだ。自分が日の丸の権威を利用していることに気づき、右翼団体を脱退したあとの出来事である。

 

私は泣いた。歌いながら泣いた。砂漠のど真ん中、ピラミッドみたいな巨大なステージの上で歌う自分にどうしようもないほど感動した。

こんな心の動きにしか、私は正直にならない。私の心を揺さぶるもののためにしか、私は動かない。

(中略)
私はもう、主義を振りかざすのはやめようと決めた。
主義なんか振りかざさなくても、私の中にはいつも、行き場のない正義感が出口を探してうずいている。私の心の琴線に触れるものがあるなら、私はすぐにどこにでも行く。

 

大いに共感したところ。思想や主義で切り分けようとすると無理が出てくるし、人はおかしくなって行く。言葉も知識も、使う人があってこそ。独り歩きするから胡散臭くなるのであって、人の気持ちを離れた所に、正しさを求めてはいけないのだ。

 

思想が良い未来を作れるかどうかも、その思想が優れているかどうかではなく、誰が実現するかにかかっていると思う。雨宮さんは、この人なら何でもやってくれる、という感じがする。