運は天にあり

内省の記録

上越遠征記

先日、日帰りで上越に行ってきた。戦国の上杉家が本拠としていた、春日山城を見るためだ。

 

春日山城の城跡は、上越市内の春日山駅から少し歩いたところにある。標高189メートルの春日山に、かつての本丸跡や屋敷跡、謙信が篭ったとされる毘沙門堂などが残っている。ここらの土地は、なにぶん謙信の存在が大きいものだから、城跡も整備されているし、資料館も多いし、普通の公民館にさえ「春日謙信交流館」と格好良い名前がついているくらい、どこも謙信一色である。夏祭りには大河ドラマで謙信を演じたガクトがやってきて、大賑わいになったりもするらしい。

 

私は謙信が好きで、数年前に一度この地を訪れたことがある。今回再び訪れてみると、以前来たときより賑やかで、観光客向けのサービスが増えているように感じられた。

 

とある資料館では、甲冑を着て髭を蓄えた武将が入り口で出迎えてくれた。ようこそ殿、と言葉をかけられたので、どうやら来館者が殿、武将がその家臣という設定になっているらしい。武将だけでなく、受付には着物を着た姫も座っていた。前に来た時はこんなのなかった、すごいことだと思った。

 

ところが、他の来館者を見ると案外淡白で、武将に声をかけられても、しらっとスルーして通り過ぎてしまう。たまたまそんな雰囲気だっただけなのかも知れないけれど、皆ちょっと冷めすぎてないかと思った。確かに、入口正面の避けられない場所で、武将が「殿!」設定で結構グイグイ来るから恥ずかしいというのはある。けれども、あんまりにもスルーが続くのを見て寂しくなってしまったものだから、武将の声かけに積極的に乗ってみた。謙信のことや、城のことなど質問すると、色々教えてくれて面白かった。

 

しかし、そこでつい楽しくなってしまい、謙信について自分で考えていた自説を語りはじめたのが失敗で、とたんに話が長くなってしまい、顔には出さねどうんざりされてしまった。武将は、他の来館者の対応もしなければいけないのであった。うまいこといかないな。

 

春日山へ登ってみると、ここでも甲冑を来た武将とすれ違った。観光客を引き連れ、ガイドをしているようだった。城跡は思ったよりも人で賑わっている。ふとしたきっかけで行きずりの老人と会話になったのだけれど、今度はこちらが長話につかまってしまい、なかなか離れられなかった。歳が違うと話のテンポも違うので、切り上げるタイミングも難しい。

 

その老人から、よく晴れた日には山頂から佐渡島が見えると教えてもらい、そんなに遠くまで眺められるのかと驚いた。前に来た時は天気が悪く、とても佐渡島どころではなかったから、今日は見えるだろうかと期待した。ところが、麓の茶店でその話をしたら、とんでもない、柏崎の方まで行かないと佐渡は見えないと言われてしまった。どちらが本当なのか、山頂から島らしき影は見えた気がするけど、何の島かは分からなかった。

 

春日山の麓には林泉寺という禅寺がある。幼い頃の謙信が修行していたこともある、上杉家とは大変所縁の深い寺である。ここで、東村アキコ雪花の虎』という漫画を知る。謙信女性説にもとづいた、女謙信が主人公の歴史漫画で、作者がこの地に来て講演なんかもしたらしく、そのことが記事になっていた。

 

東村さんは、林泉寺所蔵の肖像画を見て女性説に確信を持ったらしいけれど、言われてみてみると、確かに優しく丸みがあって女性のように見える。大いに興味をそそられ、女性説について寺の人に聞くと、「本人に出てきて喋ってもらわないと分からないからねえ」。あれこれ論じても、ご本人登場でないと決着がつかないというのはもっともな話で、なんかいい言い方だなと思った。

 

4巻まとめて買った『雪花の虎』を読みつつ、夜の新幹線で東京へ。土産に買った笹団子が美味しかった。新潟名物へぎそばも買って帰り、家についてから食べた。これも美味しかったけれど、あとで近所のスーパーで全く同じ商品を見つけてしまい、拍子抜けすると共に、へぎそばの全国的知名度を思い知らされたのだった。