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カニグズバーグ『魔女ジェニファとわたし』

 

魔女ジェニファとわたし (岩波少年文庫)

魔女ジェニファとわたし (岩波少年文庫)

 

 

謎多き黒人の少女ジェニファと、わたし(エリザベス)が友情を育んでいく物語です。

 

気になるのは何と言ってもジェニファのキャラクター。エリザベスは気づかないようにしているけれど、ジェニファは読み手から見るとちょっと意地悪で、何を考えているか分からない所があります。というか、狡猾すぎて引くところも多々あります。それでも、己の軸を持っている人は、魅力なんですよね。私がエリザベスの立場でも、ジェニファと友達になってみたいと思うだろうな。

 

ジェニファがエリザベスに課すのが、魔女になるための修行の数々です。読書家のジェニファがどこからか仕入れて来たものなのか、はたまた独自に考え出したものなのか、何だか良く分からないような修行が行われます。これはもう、夢と、ロマンの世界ですね。昔々、忍者の本を読んだ時、忍者になるための修行が紹介されていて、そのなかで、麻の種を植えて毎日ジャンプして飛び越えていると、成長の早い麻は日に日に大きくなっていくため、麻の成長に合わせて何メートルもジャンプ出来るようになる、というのを見つけたことがありまして、これを真似しようとして、でも麻の種が見つからず断念した思い出がありますが、こうすれば忍者みたいになれるのか!とワクワクしたのを思い出しましたよ。科学を勉強すると、こういうのは合理的でないからダメになってしまうのですが、ある種のごっこ遊びの楽しさみたいなものなので、子供でなくなっても憧れは尽きません。

 

子供らしい美徳で良いなと思ったのが、エリザベスが、仲の悪いシンシアを相手にしてもそれなりにうまくやっているところです。意地悪なシンシアのことを激しく嫌ってはいるのですが、あくまでもストレートで屈託がなくて、陰湿さが無いのがいいなあと思いました。シンシアの家のパーティに呼ばれたとき、ちょっと躊躇いはあるのですが、気にするのはあくまでもジェニファの目であって、パーティ自体には乗り気なのですよね。嫌いな相手と一緒にいる不快さよりも、パーティの楽しさの方が優先される気持ちの持ち方というのが羨ましく、実際、エリザベスはしっかりパーティを楽しみつつ、帰り際にはシンシアの足を踏みつけてちゃっかり嫌がらせまでして、満足気に帰っていきます。劇をやる時だって、王女役のシンシアに懐く犬の役をやっても、屈辱感はまるでなく、むしろシンシアに嫌がらせもしつつ、屈託なく楽しんでいます。本当に、気持ちが健全です。束縛癖の萌芽を見せるジェニファのほうには嫉妬などもありそうですが、それを下品に表に出さない強さはあるので、カラっとしたエリザベスとは相性も良く、2人は良いコンビだなと思いました。

 

根気強く魔女の修行を続けるエリザベスも、次第に違和感に気付き始め、ジェニファに口答えをするようになります。相手を黙らせる言葉遣いや主張の仕方を心得ていたようなジェニファですが、口答えされはじめると意外に脆く、すんなりと自分から折れていきます。ジェニファは頭が良くて賢過ぎるせいで、頭の良さを持て余し、どうにも引くに引けないような形に陥ってしまっていたのだと思います。相手に対して支配的な関係しか築けなかったジェニファと、黙々と従っていたエリザベスは、一回その関係性を壊してしまうことで、真の友情らしきものを見つけ、次のステージへ進んで行きました。

 

魔女になるための修行も刺激的ですが、魔女である必要がなくなるのは、より素晴らしいことだなと思いました。