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リチャード・マシスン『地獄の家』

読書

 

 

数々の怪現象で訪れる者を死に至らしめる「地獄の家」の謎を解明するため、館に乗り込んだ霊媒者と科学者たちの、1週間を記録したサスペンス小説です。

 

暗く、退廃的なムードの強く漂う物語でした。「地獄の家」で戦う人々は、皆、どこか影のある中高年です。老年の科学者とその妻、30年前は神童であった霊媒者、43歳の元女優の霊媒者の4人。科学者のバレット博士は超心理学を研究しており、どうやら異端とされていて不遇の生活を送っている様子。元神童たる霊媒者・フィッシャーも、零落した今となっては何をして暮らしているのか分からず、元女優の霊媒者・フローレンスも何か訳アリな感じがあります。怪異に果敢に挑んでいくような若々しさはなく、過去に何かを抱えた人達が、己の人生の暗部を引きずりながら戦っていくような、重々しさが漂っています。

 

前進する感覚を感じずらかったのも、陰惨な空気に拍車をかけていました。調査のために「地獄の家」に乗り込んだ4人ですが、依頼主からは1週間と期限が決められているため、1週間をこの屋敷で過ごすというのが一つの目標になっています。家の中を調べてみたり、降霊の儀式をしたりといった事は一応やるものの、出来ることはそれ程多くなく、基本的には館の中で起きる心霊現象を「待つ」ことになります。ここには、秘境を開拓していくような、冒険の積極性はありません。人煙稀な館の中に閉じこもり、いつどこで起こるかも分からない怪異を待ちながら、1週間の時間が過ぎるのを待つという、受け身の戦いがあるだけです。事件は多発するものの、解明に向けて進展しているのかどうかも良く分からず、全て「地獄の家」の支配者・ベラスコの掌の上で踊らされているだけなのではないかという不安にも駆られます。これが、とても閉塞的で、息が詰まる思いがしました。

 

時間の流れにも異様な緊張感がありました。一応、1週間と期限は決められていて、その時間が過ぎれば主人公たちは館から出られるので、何とかそこまで逃げ切って欲しいと思うのですが、勿論無事では済みません。流れる時間の単位はごく短く、せいぜい数時間や数分の話なのですが、その数時間や数分がとてもじれったく、嫌な予感がしてから何かが起きるまでが異様に長く感じられます。この館の中では、ちょっと目を離すというのも命取りになってしまうので、主人公たちの動きを見つめながら、なぜそこで彼女を一人にするのだ、と叫びたくなることもしばしばで、緊張感は一瞬も途切れることはなく、「ただ居るだけ」ということが、これほど大変になるものなのかと思わされました。